私は映画を見るのが好きです。
休みの日は、よく、映画館にいきます。
大学生の頃は、年間で100本、映画館で映画をみていました。3日に1回くらい映画をみていたくらい、映画が好きで、特に映画館で見るのが好きです。あの真っ暗な箱の中で、約2時間、みんなでスクリーンに集中する。前後左右の、どこの誰かもわからない人と一緒に、同じものを共有する。前にいた、怖そうなお兄さんが、私と同じタイミングで映画に感動し、鼻をすすっている、隣のお姉さんが、自分とは異なるタイミングで笑っている。
同じ映画を見ているのに、違う感情を抱く。1つの映画で、見る人の数だけ、無数の想像力が掻き立てられていく、あの真っ暗な空間が、たまらなく好きなのです。
そんな私が、昨年見た映画の中で、1番好きだった映画を紹介します。
それは、「夜明けのすべて(三宅唱監督)」です。
主演は、上白石萌音さんと、松村北斗さんです。
ざっくりとしたあらすじは、下の通りです。
藤沢さん(上白石萌音さん)は、「PMS(月経前症候群)」でイライラが抑えられなくなることがあり、職場仲間の山添さん(松村北斗さん)に度々、怒りをぶつけてしまいます。そんな山添さんも、「パニック障害」を抱えていて、様々なことを諦めながら、生き甲斐も気力もなく生活しています。そんな二人が、職場の人たちに支えられながら、お互いを同志のように感じ、心を通わせていく、というお話です。
この映画は、とてつもなく誠実で愛おしいお話です。映画の中に生きる人々の何気ない言葉や所作の中で、「優しさ」が滲み出ているのは、人々の「日常」にフォーカス当てて撮り続けてきた、三宅監督ならでは。
誰かのために動くこと、相手のことを想像し、手を差し伸べること。それがきっとどこかで誰かを救っていること。誰かの「夜明け」になっていること。辛く苦しい夜道にそっと隣にいて、駄弁ってくれること。どうしようもない時に空を見上げると星が綺麗なこと。そして、どんな日でも、必ず、「空は夜明けを告げてくれること」。
主演のお二人の、はからずも愛おしい佇まいに、現代の生きづらい世の中に垣間見る「ひかり」をみました。
映画の終盤に、こんなことわざがでてきます
「夜明けの直前がいちばん暗い」。イギリスのことわざのようです
夜があるからこそ、朝がくる。暗闇があるからこそ、自分の外の世界を想像し、手を伸ばすことができる。
大切なことは、どんなときにも、想像することをやめないこと。時間が経てば、良くも悪くも光は射す。それまで、自分を信じ、他者を信じ、世界を想像し続けること。まさに私が映画を見る理由。
ほんとうにかけがえのない大切な映画となっています。
映画館で映画を見るように、自分と、自分の周りを想像し、自分の外の世界に少しずつ手を伸ばしていける、そんな一年にしたいなと思います。(いっぺる)